官民共同で設立された御大礼奉祝委員会(会長 伊勢市長)が作製した「平成感謝 国民総参宮」というのぼり旗が市内各所に立てられたものの、伊勢市役所前に設置されたそれが行政の政教分離原則に反するとして急遽撤去されました。
中日新聞などが報じたもので、市役所以外の場所に立てていたのぼり旗も、1月8日までにすべて撤去されたとのことです。
御大礼奉祝委員会は、今年4月末で現天皇陛下が退位し皇太子殿下が新たに即位されることへの感謝と奉祝のため伊勢市と伊勢商工会議所、伊勢小俣町商工会、伊勢市総連合自治会、伊勢市観光協会により結成された官民共同の組織。
中日新聞の記事によると2018年度の委員会の予算は382万円ですが、伊勢市は298万円を支出しており、これは全体予算の8割に当たります。
この、のぼり旗撤去の発端は、1月8日の伊勢市長の定例記者会見の席上、記者から市役所前に立てていた6本が「政教分離に反するのではないか」と指摘されたことでした。
それを受けた鈴木市長が「国民総参宮の文字は奉祝委の熱い思いが表現されたものであり、観光誘客につながればとの思いから設置を許可したが、不適切だった」として撤去を指示したものだそうです。(中日新聞 駅前など53本も撤去 伊勢「国民総参宮」のぼり旗 1月10日付け)
一方で、伊勢新聞は「伊勢を紹介する上で伊勢神宮は欠かせない存在」であり、のぼり旗に政教分離のおそれがあると判断されたことについて、伊勢市役所の観光部門に動揺が走っていることを報じています。(伊勢新聞 伊勢・参宮のぼり旗撤去 改元控え揺れる市観光部 1月14日付け)
伊勢市は伊勢神宮のお膝下であり、夏の恒例行事である伊勢神宮奉納全国花火大会など「伊勢神宮」や「奉納」といったコンセプトの公営行事は少なくありません。市民の多くも、こうしたことに違和感は感じていないでしょうし、のぼり旗の件で危惧されるように、意に沿わない伊勢神宮への参拝の誘導といった意図はまったくないことも大多数の市民にとっては自明のことかと思います。
しかし、グローバル化が進む中で、行政が宗教施設や宗教的行事に関わるべきかは問い直されつつあることも確かです。行政も含めた関係者は、過度に委縮することなく、信仰の自由は誰にとっても保証されるべきものなことは前提としたうえで、伊勢神宮への崇敬を地域の活性化につなげていく方策を議論していくべきでしょう。
2019年1月14日月曜日
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