2018年10月11日木曜日

伊勢神宮祭主が建てた寺院「蓮台寺」(1)

10月に入りましたが、伊勢(宇治山田)ではまだまだ暑い日が続いています。
とは言え、伊勢市の秋を代表する特産品である「蓮台寺柿」(れんだいじがき)もスーパーの店頭で目にするようになってきました。


蓮台寺柿は、藤里地区という、ちょうど伊勢神宮の外宮(山田)と内宮(宇治)の中間あたりに位置する丘陵地帯で300年以上前から栽培されてきた固有品種で、伊勢市の天然記念物にも指定されています。
ただ、古来からの品種の柿の多くがそうであるように、蓮台寺柿も渋柿で、生食が広く流通するようになったのは炭酸ガスによる渋抜き処理ができる施設が整備された、ここ十数年ほどのことです。

ところで、このブログの視点からは、この「蓮台寺」という地名が気になるところです。

この付近一帯はかつて旧宇治山田市に合併する以前は蓮台寺村と呼ばれる農村でした。地名の由来になった蓮台寺とは平安時代に伊勢神宮の祭主によって建立された、鼓岳山蓮台寺というお寺です。

宇治山田は廃仏毀釈がいち早く実行されたため明治2年には蓮台寺も廃寺になり、今、この一帯は柿畑と、昭和の高度経済成長期に開発が進んだ大規模な住宅団地に姿を変えて、かつてここにお寺があったことなど想像すら難しいほどに変貌しています。


それにしても、「祭主」という役職は、藤原鎌足を祖とする大中臣家が代々世襲してきた、伊勢神宮で最高位にある神職です。

全国のたくさんの神社、神宮の中でも、古代から外来宗教である仏教を忌避する姿勢が特に強かったのが伊勢神宮です。そのトップに当たる人物が、なぜお寺など建立したのでしょうか。

これについては、鎌倉時代初期(1212~1215年の間らしい)に源顕兼という人物が記した「古事談」という説話集に詳しく由来が書かれています。(古事談 第五 神社仏事 伊勢国蓮台寺事)

これによれば、蓮台寺を建立したのは伊勢神宮の祭主・大中臣永頼(おおなかとみながより)です。永頼は祭主という立場上、長らく仏事を憚ってきました。しかし、仏教への思念は捨てがたいものがあったようで、ある時、伊勢神宮に三日間参籠し、寺院を建立すべきかどうか天照大神の神意を問うていました。

そして参籠の最後の日、夢うつつの中で、内宮正殿の扉が開いて三尺(1メートル)ばかりの金色の観音様が光り輝いている姿を見たのです。

現代の常識では、永頼さんはおそらく三日間にもわたって瞑想を続けたため幻覚を見たのではないかと思ってしまいます。しかしとにかく、この夢告は永頼祭主にとって、天照大神から寺院建立を承認してやるというご託宣に思えたに違いありません。

実際に蓮台寺が建立されたのは平安時代中期の正暦年中(991~994年)と推定されており、最盛期には広大な敷地にいくつものお堂を有していたそうです。


しかし長い年月を経て、江戸時代の末にはかなり衰退してしまっており、天照大神の夢告である観音菩薩像を祀る、本堂だけの小寺になっていました。(この像は廃寺後、近くにあった中山寺に移されました。)
また、蓮台寺には寛永年間(江戸時代初期)に農民が境内地で耕作していて偶然発掘した八面鏡が伝えられています。これは瑞花双鳳文八稜鏡(ずいかそうほうもんはちりょうきょう)という平安時代の銅鏡であり、おそらく伊勢神宮から撤下された宝物と推定される大変に貴重なもので、伊勢市の有形文化財になっています。
(つづく)

The specialties of Ise city are Rendaiji-gaki(Rendaiji persimmon). 
Rendaiji-gaki is large and tasty persimmon, many people enjoy the taste in autumn.
Rendaiji is the name of a temple once in this place.
Ise city is the capital with Ise Shrine, the highest peak of Japanese Shintoism.
Since Ise Shrine has long been an exclusion of Buddhism originally a foreign religion.
However, Rendaiji was a temple built by himself of the priest of Ise Shrine a thousand years ago from now.
Why did the priests build a Buddhist temple? 

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