大きな石が地表から30センチほど突き出し、銅器の鼎(かなえ)のように3つに割れた形をしています。しめ縄で囲まれているためもあって、かなり目立ちます。
一部の観光ガイドブックやインターネットホームページ、ブログなどには「三ツ石はパワースポット」であるとか、「手をかざすと温かさを感じる」などといった記述がみられます。
また、実際に外宮に行くと、三ツ石の周りに人垣ができており、両手をかざしたり、拝んでいる人がいるのも頻繁に見かけるようになりました。
しかし、こんなふうに三ツ石に手をかざしている人など、私が子供の頃にはまったく見たことがありませんでした。自分の知る限り、こうした三ツ石にまつわる奇習(?)を見かけるようになったのは、平成25年に斎行された第62回式年遷宮の数年前くらいからだったと思います。つまり、つい最近のことなのです。
この時期は、リーマンショックによる不景気が世情を覆っていました。伊勢神宮が「ヒーリング」とか「癒し」とかの切り口で喧伝されるようになった頃です。また、スマートホンが普及して、SNSが情報拡散手段として社会に認知された頃にも重なります。
三ツ石がパワースポットなどとは誰が言い出したことなのか知る由もありませんし、もちろんどのような宗教観を持とうとそれは各人の自由ですが、伊勢神宮のホームページによると三ツ石とは次のようなものです。
古殿地の南側にある三個の石を重ねた石積みで、この前では御装束神宝(おんしょうぞくしんぽう)や奉仕員を祓い清める式年遷宮の川原大祓(かわらおおはらい)が行われます。近年、手をかざす方がいますが、祭典に用いる場所なのでご遠慮ください。
つまり、神様の依代といった信仰の対象ではなく、神事を行う場所の「目印」という理解が正しいようです。「手をかざす行為は遠慮すべき」ことがはっきり書かれていますので、外宮をお参りする方はパワースポットなどという俗説には惑わされないでほしいものです。
ところで、川原大祓という、本来なら清流が流れる川の前で行われるべき神事が、川でも何でもない参道の真ん中で行われるのはなぜでしょうか。
冒頭で、左折すると多賀宮などの別宮に至る・・・と書きましたが、この方向、つまり三ツ石の南側に進むと、途中に池があり小川が流れていることに気付きます。
実は、今では想像すらできませんが、外宮が現在のように整備された7世紀の飛鳥時代以前には、ここには「豊川」という川が流れていました。池や小川はこの頃の名残です。外宮の正宮は、清流のすぐ近くに建っていたということになります。
(つづく)
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